調査で石綿が見つかったら、そこから何が起きるか|除去工事の流れ・期間・費用
最終更新:2026-08-31
結論:「あった」=工事が止まる、ではありません。レベル3なら工期への影響は限定的です。工期を左右するのはレベル1・2で必要になる「14日前の届出」で、ここだけは短縮できません。そして届出の一部は施工会社ではなく発注者が出します。
事前調査を出し渋る理由で一番多いのが、「見つかったら面倒なことになる」です。 ですが実際に何がどれだけ面倒になるかは、石綿のレベルによってまったく違います。 ここを知らないまま「見つかったら困る」と身構えている方が、結果的に段取りを崩します。
先に言っておくと、分析で「入っていない」と出ることは普通にあります。 2006年より前の建物でも、過去の改修で建材が入れ替わっていれば石綿は出ません。 「なかったことを証明する」のも調査の目的です(アスベスト調査は義務?)。
レベルによって、その先がまったく変わります
| レベル | 該当する建材 | 除去時に必要になること | 工期への影響 |
|---|---|---|---|
| レベル1 | 吹付け石綿 | 負圧隔離、集じん・排気装置、計画届(14日前)、大防法の届出(14日前) | 大きい |
| レベル2 | 石綿含有の保温材・耐火被覆材・断熱材 | 隔離、計画届(14日前)、大防法の届出(14日前) | 大きい |
| レベル3 | スレート、Pタイル、その他の成形板など | 湿潤化、作業主任者の選任、掲示など。計画届は不要 | 限定的 |
現場で出会う頻度が高いのは圧倒的にレベル3です。 床のPタイル、天井や壁の成形板、外壁のスレート——このあたりは 計画届の対象ではないため、工期が2週間飛ぶような話にはなりません。
ただしレベル3にも例外があります。石綿含有けい酸カルシウム板1種を破砕する場合と、 石綿含有の仕上げ塗材を電動工具で除去する場合は、隔離が必要になります(負圧までは不要)。 けい酸カルシウム板1種は天井や耐火間仕切壁に使われていて、 他のレベル3より飛散しやすいためです。「レベル3だから軽い」と一括りにはできません。
工期を決めるのは「14日前」です
レベル1・2が出た場合、動かせない締切が2つ生まれます。どちらも14日前です。
① 計画届(労働基準監督署へ)
吹付け石綿や石綿含有保温材等の除去・封じ込め・囲い込みを行う工事は、 労働安全衛生法第88条に基づき工事開始の14日前までに所轄の労働基準監督署長へ計画届を出します。 提出するのは事業者(元請)です。
なおレベル2が計画届の対象になったのは令和3年4月1日からです。 それ以前は作業届で済んでいたため、古い感覚のまま段取りを組むと届出が間に合いません。 保温材・耐火被覆材を扱う設備工事の方は特にご注意ください (配管設備の改修)。
② 特定粉じん排出等作業実施届出(都道府県等へ)
大気汚染防止法に基づく届出です。対象は吹付け石綿・石綿含有の断熱材・保温材・耐火被覆材、 つまりレベル1・2。こちらも作業開始の14日前までです。
この届出を出すのは、施工会社ではなく「発注者」です。 平成26年6月1日の改正で、届出義務者が受注者から発注者および自主施工者に変わりました。 ここを知らずに「元請がやってくれているはず」と双方が思っていると、誰も出さないまま14日を切ります。 石綿が出た時点で、発注者(施主・ビルオーナー・管理組合)に伝えるところまでが段取りです。
逆算するとこうなります
| 工程 | 所要 |
|---|---|
| 事前調査・検体採取 | 現地は1時間かからない(最短即日) |
| 分析 | 中5営業日ほど。短縮できません |
| レベル1・2と判明 | ここから届出の準備 |
| 計画届・大防法の届出 | 作業開始の14日前まで |
| 除去工事 | 面積・レベル・隔離の要否による |
| 本来やりたかった工事 | 除去が終わってから |
つまりレベル1・2が出た場合、分析の5営業日+届出の14日で、最低でも3週間ほどを見ておく必要があります。 逆に言えば、調査を早く回した分だけ、この3週間を前倒しできます。 「調査は後でいい」が一番高くつくのはここです (事前調査は何日かかるか)。
すでに工事日が迫っている場合の選択肢は 工事直前に調査を忘れていた時の対処にまとめています。
費用の桁を知っておく
国土交通省が公表した吹付けアスベスト(レベル1)の除去費用の目安は次のとおりです。 事前調査・仮設・廃棄物処理まで含んだ金額です。
| 処理面積 | 目安(1㎡あたり) |
|---|---|
| 300㎡未満 | 2万〜6万円 |
| 300〜1,000㎡ | 1.5万〜4万円 |
| 1,000㎡以上 | 1万〜2.5万円 |
この数字は2005年に公表されたものです。 人件費も産廃の処分費も当時より上がっているため、今はこれより上振れする前提で見てください。 ここで掴んでいただきたいのは正確な金額ではなく桁です。 レベル1の除去は数十万円ではなく、数百万円から数千万円の話になります。
一方でレベル3は桁が違います。成形板の撤去は通常の解体・撤去に 湿潤化と作業主任者の選任、掲示、処分方法の管理が乗る形なので、 レベル1のような負圧隔離の仮設費用はかかりません。
だからこそ「どのレベルが、どこに、どれだけあるか」を正確に出す調査に意味があります。 曖昧なまま「みなし」で全部レベル1相当の措置を取れば、費用は跳ね上がります。 調査費をケチった結果、除去費で何倍も損をするのが最も多い失敗です。
産業廃棄物としての処分まで含めて工事です
除去して終わりではありません。石綿含有廃棄物としての処分と、 マニフェスト(産業廃棄物管理票)の発行・保管まで含めて工事です。
- レベル1・2で発生したもの:廃石綿等(特別管理産業廃棄物)として、より厳格な保管・運搬・処分が必要
- レベル3で発生したもの:石綿含有産業廃棄物として、他の廃材と混ぜずに処分
処分先の確保と伝票の管理は、除去そのものより地味ですが、後から記録を求められる部分です。 ここまで手配できる体制かどうかは、見積もりの段階で確認しておいた方がいいところです。
「調査だけの会社」に頼むと、ここから業者探しが始まります
調査を専門にしている会社に依頼した場合、報告書を受け取った時点で関係は終わります。 そこから除去業者を探し、相見積もりを取り、調査結果を一から説明し直すことになります。
実務で効いてくるのはこの引き継ぎです。「どこに何がどれだけあったか」は報告書に書いてありますが、 現場を見た人間の判断——どこから手をつけるのが早いか、どこが読みにくいか——は書面に残りません。 別の会社に渡せば、その分だけ段取りが遅れます。
当社は調査を自社で実施します。除去工事は請負金額500万円未満なら当社が直接施工し、 500万円以上は建設業許可を持つ提携先の株式会社エコ・テックが受注します (当社は建設業許可を持たないため、500万円以上の建設工事はエコ・テックが請負います)。 その場合も、調査を担当した当社の人間が現場監督として現場に入るため、施工の質や引き継ぎで齟齬が出ません。 産業廃棄物の処分は、規模にかかわらずエコ・テックと連携します。 継続して組んでいる相手なので、調査の段階で「あった場合はいくら・何日」まで含めてお伝えできます。 窓口は当社ひとつです。
まとめ
- レベル3なら工期への影響は限定的。計画届の対象ではありません
- レベル1・2は分析5営業日+届出14日で、最低3週間を見る
- 大気汚染防止法の届出を出すのは発注者。石綿が出たら発注者に伝えるところまでが段取り
- レベル1の除去は数百万〜数千万の桁。だからこそ「どこに何があるか」を正確に出す調査に意味がある
- 処分とマニフェストまでが工事。そこまで手配できる体制かを見積もり段階で確認する
「見つかったらどうなるか」が読めていれば、調査は怖いものではありません。 読めないまま先送りにすることが、一番工期を壊します。
建物の用途・築年・工事の範囲・予定日を教えていただければ、 「あった場合にどこまで伸びるか」まで含めてその場でお答えします。