アスベスト調査は義務?「うちの工事は小さいから不要」が一番危ない
最終更新:2026-08-30
結論から言います。アスベストの事前調査は、工事の規模に関係なく、すべての解体・改修工事で必要です。よく言われる「100万円未満なら不要」は、報告義務のラインと取り違えた誤解です。
「100万円未満の工事だから調査は要らない」——これは現場で本当によく聞く誤解です。 100万円という数字は調査結果を役所に報告する義務のラインであって、 調査そのものをやるかどうかのラインではありません。
ここを取り違えたまま工事を進めてしまうと、後から止まります。まずこの2つを分けて理解してください。
「調査の義務」と「報告の義務」は別物
| 対象 | 基準 | |
|---|---|---|
| 事前調査 | すべての解体・改修工事 | 規模の下限なし |
| 調査結果の報告 | 一定規模以上の工事 | 解体=床面積80㎡以上/改修=請負金額100万円以上(税込) |
報告が必要になるのは、次のいずれかに当てはまる場合です(令和4年4月以降に着工する工事から)。
- 建築物の解体工事:解体する部分の床面積の合計が80㎡以上
- 建築物の改修工事:請負金額が税込100万円以上
- 特定の工作物の解体・改修:請負金額が税込100万円以上
- 船舶(鋼製・総トン数20トン以上)の解体・改修
報告は電子システムから行い、1回の操作で都道府県等と労働基準監督署の両方に届きます。
逆に言えば、80㎡未満でも、100万円未満でも、調査自体は必要です。報告が要らないだけです。
調査は「誰でもできる」わけではなくなりました
もう一つ、見落とされがちな変更があります。事前調査は有資格者が行わなければなりません。
- 建築物:令和5年(2023年)10月1日以降に着工する工事から
- 工作物:令和8年(2026年)1月1日以降に着工する工事から
建築物の場合、調査ができるのは「建築物石綿含有建材調査者講習」の修了者、 または令和5年9月30日以前に日本アスベスト調査診断協会に登録された方に限られます。 社内の詳しい人が見て終わり、では要件を満たしません。
工作物についても2026年1月から資格者要件が始まっています。 ボイラー・圧力容器、配管設備、煙突、変電設備などが対象です。 詳しくは工作物の事前調査が2026年1月から有資格者必須にをご覧ください。
調査結果は「貼る」「残す」までがセット
調査が終わったら、それで完了ではありません。
- 掲示:すべての解体等工事で、調査結果を作業場所の見やすい場所に掲示します。サイズはJIS A3判(29.7cm×42cm)以上
- 記録の保存:調査の記録は3年間保存し、作業場所に備え付けます
「調査はやったが書類が残っていない」という状態は、やっていないのとほぼ同じ扱いになります。
現場でよくある勘違い
実際に調査を数多く受けている立場から、特に多いものを挙げます。
「レベル3だから、みなしで進めていい」
含有しているものとして扱う(みなし)ことは制度上あり得ますが、そのぶん処分費が跳ね上がります。 たとえば石膏ボードは、アスベスト含有として処分すると通常の倍前後になることがあります。処分場とマニフェストの手間も増えます。 数万円の調査費を惜しんだ結果、処分費で数十万円多く払っていた、というのは珍しくありません。
「見えている壁だけ調べればいい」
天井裏の断熱材、配管の保温材、床のPタイルとその接着剤など、目に入らない部分に含まれていることがあります。 特に床は「タイル本体」と「糊」の両方に入っているケースがあり、その場合は除去の手間が一気に増えます。
「うちは設備工事だから関係ない」
壁に穴を開ける、感知器を交換する、ポンプを入れ替える——いずれも改修工事です。 消火ポンプのフランジに挟まっているパッキンは、多くの場合アスベストです。 エアコンの設置・交換についても別の記事で詳しく説明しています。
間に合うかどうかが、一番の問題
「この工事は調査が要るのか」「報告の対象になるのか」は、工事の範囲と面積が分かればその場で判断できます。判断だけなら費用はかかりません。
そして、調査が必要だった場合に一番困るのは間に合わないことです。 現地の作業自体は1時間もかかりませんが、分析機関の結果が出るまでに中5営業日ほどかかります。 工事日から逆算すると、思っているより余裕がありません。